国立大附属校
国立大附属は前年度必ずしも安全志向で敬遠されたわけではありませんでしたが、今年度は応募者数増となった学校が目立ちます。移動の機会が増えることを避ける人が減った結果、募集人員が少なく不合格になる可能性が高い国立大附属も選択肢に加えられるようになったのではないでしょうか。筑波大学附属は男子が増、女子は減りました。男子は一年ごとに実質倍率が上下する隔年現象が生じつつあります。お茶の水女子大学附属は2年連続の応募増となり、過去5年間で最高の実質倍率となりました。東京学芸大附属は近年応募者数が減少傾向にありましたが、今年度は大幅な応募者増となりました。毎年のように募集要項の変更を行っていたのが受験生から敬遠されていた一因かと思われますが、今年度大きな変更はなく、それが安心材料になったかと思われます。東工大科学技術は100人以上の応募増となりましたが、それでも過去10年で前年度に次いで少なく、緩やかな入試が続いています。東工大との高大連携特別入試が廃止になったことが思いのほか尾を引いているのかもしれません。2025年度までに大岡山キャンパスへ移転予定であり、在学中に移転が行われることになる学年の入試に影響があるかと思われます。
私立高校
①難関進学校開成は前年度が低倍率だった反動か、今年度は70人近く応募者が増え、実質倍率は2.97倍へと上がりました。前年度、本郷の募集停止の影響を受けて応募増となっていた城北は27人の応募者減、都立の同レベル校の男子受験者が軒並み増えており、都立第一志望者が城北よりも堅実な併願校を選んだのかもしれません。前年度から5科型入試を導入した巣鴨は5科型入試の応募者が246人(前年度178人)に増えた一方、3科型入試は38人(前年度67人)に減りました。実質倍率は3科型が2.00倍だったのに対して5科型は1.43倍と低く、5科型には都立や国立大附属との併願者が多かったため合格者を多く出しているのではないかと考えられます。
②大学附属校
青山学院は高い人気を維持しました。コロナへの不安がやや緩和されているのか、通学電車が混雑する都心部の学校の応募者増は都立校でも見られました。早稲田実業は今年度募集定員を減らした結果、実質倍率が推薦は前年度1.67倍から2.37倍へ、一般は3.07倍から3.89倍に上がりました。慶應義塾女子は推薦の実質倍率が5.96倍と2014年度に募集枠を10人から20人に拡大して以来の最高倍率でした。豊島岡女子学園の高校募集停止によって学力上位の女子が慶應女子に集まってくるのではないかと思われましたが、予想されたほどの増加にはならず、一般入試は前年度とほぼ同数でした。都立の上位校でも女子の応募者数が減っていることから学力上位の女子が私立から都立に流れたということではなく、都立、私立志望者ともに安全志向が働いたと考えられます。日本大学系の高校では、大学が不祥事に揺れた今年度、8校合計の応募者数が過去4年間で最少となりました。そんな中で推薦、一般ともに応募者の減少傾向が続いていた日本大学第一には一般の方に反動があって応募者増となりました。目黒日本大学は募集数を減らし、クラス改編すると同時に内申基準の加点対象を狭めました。その結果、推薦、一般ともに大幅減となっています。
③私立進学校
共学化3年目の品川翔英は前年度に応募者が急増し定員の2倍を超える入学者を迎えたため、今年度は入学者数を抑える必要に迫られました。募集数を減らし、内申基準を上げた上に5科に限定し、加点も廃止しました。さらに、内申基準を満たしていても合格は確約しないと募集要項に明記しました (結果的には推薦や一般併願優遇で不合格者は出ませんでした) 。東洋は総進を募集停止し、特選と特進の募集数を増やしたうえ基準を上げた結果、推薦一般ともにほぼ半減しました。駒込は推薦で特Sの9科基準をアップ、併願優遇から3科の選択肢をなくしましたが、推薦一般ともに微減で留まっています。SDH昭和第一は一般が微増となりました。文京区では公立中学校卒業予定者数が前年度より20%近く増えており、その影響もあったかと思われます。関東第一は推薦44人(6.9%)、一般281人(20.2%)増となり、高い人気を維持しています。